迷えるイカ記

洋楽オルタナティヴロック、イラスト、そのたいろいろなものがたり

珊瑚

山岳小説家として有名な新田次郎の小説「劒岳(つるぎだけ)」は映画化もされ私も劇場に観に行きました。彼の作品の中に「珊瑚」という小説があり、これは私の故郷の長崎の海が舞台という事で強く惹かれ、いつか読もうと思っていた。で、ちょっとした騒動でその事を思い出し、小説「珊瑚」を検索してみると、どうやら「珊瑚」は紙の本はもう出版していないらしく電子書籍のみになっていた。古本や図書館も検討してみたけど、結局Kindle電子書籍端末を使う事を検討しようと思い「珊瑚」をAmazonのサイトから購入し、今読んでいる。「珊瑚」は大風(台風)の中、珊瑚漁船に乗る漁師達がなんとか「珊瑚」と自分達の命を海の上に繋ぎとめようと奮闘しているシーンから始まる。そこは男女群島という群島で、実際に長崎の五島列島の南の方に位置する小さな島々の事をそう呼ぶ。男女群島は釣りをする人は良く知っていると思う。高級魚の好釣り場で渡し船が出ている。

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私の母は五島列島の北部の島の出身で、家族でたびたび島にある母の実家の祖父母の家に帰省していた。台風が南の方で大陸の影響か行先を北からやや東へ方向転換して北上し五島列島に沿って行くことがある。台風が来ると船が運航しなくなるので、島に物も新聞も届かなくなる。 私が学生の頃に夏休みを利用して祖母の家に滞在した時に台風が来た事がある。かなり大きな台風で電気が止まってしまった。祖母の家は黒電話だったので、電話は通じ水も出たので、母に連絡し家でじっと台風が通り過ぎるのを待つ事にした。船が運航できるようになるのに3日ぐらいかかったのだろうか。島のお店からは商品が色々と消えてさみしくなっていた。庭先まで大波が押し寄せて来ているのかと思うくらいのすごい嵐で、雨戸を閉めていたにも関わらず縁側がびしょぬれになっていて祖母と一緒にカーテンを洗濯したり、縁側の掃除をしたりした。帰る時は祖母が申し訳なさそうにお小遣いをたくさんくれた。祖母はなんだか名残惜しそうだったけど、私は正直早く家に帰りたかった。 とはいっても、今となってはすごくいい思い出で、いつも祖母の事、島の事を思う時は頬を緩めながらそのエピソードを思いだす。宝物。 現在でも港の反対側では透き通る遠浅の海で海水浴が出来る。近年は人口も減っている事だろう。湿った石垣でサワガニが遊ぶ美しい島。美しいものはあっても便利な物はないから。 そんなことを思いながらソファーに寝ころびまどろんでいた時、iPadに入っている小説「珊瑚」に意識を向けた瞬間、島の風が鼻先をかすって行った気がした。

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