迷えるイカ記

洋楽オルタナティヴロック、イラスト、そのたいろいろなものがたり

「鎖国」という外交 (全集 日本の歴史 9)[読書]

先日伊豆に一泊の旅行にいってきました。

その時に下田へ観光に行き、ペリーロード Mobs 黒船ミュージアム などを見物しました。 黒船(BLACK SHIP)ミュージアムは、幕末にペリーと日本との間で日米下田条約が締結された了仙寺に隣接しており、了仙寺所蔵の黒船来航時の模様を描いた絵画等の資料が展示されており、「日本人が見た外国人、外国人が見た日本」、「日本人が見せたかった日本、外国人見せたかった日本」など黒船や異文化交流に関する貴重な資料を見る事が出来ます。

この歴史資料を語るうえで面白い本があるので紹介がてら、博物館資料についても触れてみたいと思います。

「鎖国」という外交 (全集 日本の歴史 9)

「鎖国」という外交 (全集 日本の歴史 9)

 

 

日本の近世(江戸時代)は、「鎖国」だったとみなされてきた。日本は200年以上にわたって、一部の例外を除いて外国との付き合いを絶ち、国を閉ざしてきたという、「鎖国」史観といわれるものである。しかし本書の著者ロナルド・トビ氏は、それは対西洋に限った偏った見方に過ぎず、実際には日本は近世を通じて中国・朝鮮など東アジア世界と密接に繋がっていることを以前から指摘してきた。トビ氏によれば、近世日本の外交方針は決して「国を閉ざす」という消極的なものではなく、みずからの構想のもと主体的に選択したものだったという。そんなトビ氏が描き出す、従来の「鎖国」史観にとらわれない、新しい近世像。

 

本書は日本の近世(江戸時代)は「鎖国(状態)」だったという史観に付いて、「はたして鎖国状態だったのか?」と言う疑問を投げかけ、資料を検証し、それを基に鎖国考について再構築していこうというものであります。「鎖国」か「そうでない」かという議論は、「鎖国」がどういう状態なのかの定義をしてからこそ成り立つものでありますが、ここ数年は言葉の定義が「国会」で行われるようになってるいるとか、なっていないとかいう事もありますが、江戸幕府の「外交」を知ることで見えてくるものは、鎖国かそうでないかと言うことではなく、どういう風に国が国を制していたのか、庶民が国をどう言う風に見ていたのかと言う一つの国の形です。

まずはこの徳川幕府の行った「鎖国という外交」からは徳川幕府というものは、国を治めるといっても、まずは豊臣方の大名や、朝廷などの力を抑える必要があったので、最初から最後まで「幕府の威信を保つ」事が最重要課題だったというのが伺えます。時には、名目上は対等な外交である、朝鮮通信使を利用し朝貢をしているように演出する事によって、幕府の威光を誇示する事もあったようです。

外交を制限した主な目的はキリスト教の徹底的な排除です。キリスト教は思想そのものよりも、神と言う絶対的な存在が王よりも権力を持った歴史を持つので、徹底的に排除するのは必然です。

同時に東アジアの、朝鮮や明との関係を保ち、大陸の国際情勢にも注視する必要がありました。中国大陸(主に清)からの脅威は、幕府の存続に強く影響を与えるからです。

そして「鎖国」状態の「外交」は、日本と言う国の概念をはっきりと形にしていった事。それと同時に意識を「外」に向けさせるだけでなく、外からの「日本」を意識させたのです。伊能忠敬の行った日本全国の測量は江戸幕府が行った事業であり、「外から(ロシアの日本近海進出)」の脅威に対し、日本と言う国の海外線制定を、防衛のために行う必要がありました。

このように、海外からの接触により、日本はシンボリックな事を行い、日本という国を作って来たともいえます。

これは、この本と、黒船博物館を見た私の感想ですが、日本はとにかくシンボリックな事をする国だった、(である)という印象です。(もちろん、凱旋門がそうであったように、外国もパフォーマンス的な事をやっていましたので、「日本はシンボル期だった」と言った方が正しいのかもしれません)それは江戸時代の絵画表現にも表れており、

本書でも指摘のある通り、西洋画が写実的であったのに対し、多くの日本の絵はシンボルを使って絵画を表現したと思われる。具体的に言うなら、「異国人(西洋人)」を表現するにも、特定のシンボル「赤い顔」「天狗鼻」「髭」などを利用して描き「これは『異国人』」だと示しています。

黒船博物館にある絵図などにも、それが表れていて、日本のものは西洋の新聞に載った絵に比べても「漫画的」だと思いました。

その表現はどちらが、優れいると言うものでもなく、日本画は時には驚くべき大胆さ、時には繊細さを用いて、物事を表現しており、表現文化の違いの一つだと思われます。

江戸幕府においても、御用画家に描かさせたとされる絵画などがありますが、どれも、幕府が「描きたいもの」を描いているので、「誰にでもわかりやすく」描くためにシンボルを使って描いたと思われます。いわゆるハイコンテクストな内向きの絵を描いて、国内に威光を示そうとしていたのがうかがえます。

ハイコンテクスト文化の中の、物事のシンボル化の利点と言えば、顔文字等はそうですし、キャラクターなども当てはまると思います。例えばキティーちゃんは猫ですので、キティーちゃんの顔の輪郭と髭を描くだけで、キティちゃんを知っている多くの人がその絵が猫だと認識出来るのです。日本のキャラクター文化、漫画文化はそう言った文化を色濃く反映したものではないでしょうか? 

そんなことを思いながら、驚きと好奇心で、異文化コミュニケーションによるカルチャーショックを追体験できる味わい深い町、下田を歩きました。

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黒船博物館オリジナルのマスキングテープ。コミカルでかわいらしい。

www.mobskurofune.com

旅行のことものちに書こうとは思います。

ばいちゃ