迷えるイカ記

洋楽オルタナティヴロック、イラスト、そのたいろいろなものがたり

「第四間氷期」安部公房(読書)

お題「夏の一冊」

ヒャッハー委員会あらため、ミミズク委員会のお題「夏の一冊」

わたのナツイチといえば、学生の時の夏休み。祖母の家に泊まりに行った時に読んだ、家の中のそこいらの段ボールの中にあった、春本(小説)。あれは台風で島に足止め食らった時だったのかもしれないけれど、島にいたとして、海に行くか行かないかのどっちかで、だいたい暇なので、本などを読んで過ごしていたと思う。春本も「四畳半襖の下張」みたいな感じだとは思うけど、あれは何の小説だったのかな?

で、本題の夏イチ。夏といえば青春とかそんな感じでなんだろうけど、私は、爽やかなスポ根ものとか友情モノっていうのは、好きじゃないので、そのジャンルはほとんど読んだこともないのでパス。 

で、何やかんやで思いついたのが、安部公房の「第四間氷期」。(単に安部公房が好きなだけなんだけど)

www.shinchosha.co.jp

現在にとって未来とは何か? 文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か? 万能の電子頭脳に平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに端を発して事態は急転直下、つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、やがて機械は人類の苛酷な未来を語りだすのであった……。薔薇色の未来を盲信して現在に安住しているものを痛烈に告発し、衝撃へと投げやる異色のSF長編。

電子頭脳というのは、今でいうAIみたいなもので、色々なデーターを打ち込むと、いろんなことを予測することができる機械。
この小説が連載されていたのが、1959年(昭和34年)だから、安部公房の地に足のついた奇想天外さっていうのはずば抜けてすごいと思う。
主人公が、未来予測をしてしまう「電気頭脳」に恐れを抱き、それゆえにとってしまった判断が、主人公を更なるトラブルに巻きこんでいく形で、物語が進んで行きます。語を通じて、現代における氾濫する情報の扱い方にも共通する問題も暗示されていて、もちろん昭和の時とは、情報の量もですが、私たちが知ることのできる、時には命に関わる情報は、その情報がどのくらい確かなのかという「質」についても、より詳細に分かるようになってきていて、それを知った人がどう判断するのかは、昔よりも、より強く私たちの手に委ねられており、そういった部分にもフォーカスされていて、半世紀以上前に作られた物語なのに、切り口が素晴らしいなと感心してしまいます。 コンピューター頭脳や、未来を知ってしまった、世界線の扱いというか、そういうのも、うまく構築されているから、次々に明かされる「隠された真実」にも、安っぽさがないというか、世界と、人のちょっとした異次元的な場への導き方、線のつなぎ方が上手いので、物語の世界に没頭してしまいます。電子頭脳を使って、未來や過去(の頭脳)とのやりとりを、登場人物にさせているところが、とにかくよくできているというか、発想が優れているなぁと思います。最後にはやっぱり、電気頭脳の映し出した未來というものを、疑問というか、どうしても否定してしまところがあって、テクノロジーをどう扱うのかという事で葛藤が頭の中で揺れ動きます。本当に思考や、感情が、ダイナミックに動かされる物語です。
SFミステリー調なので、ネタバレはしませんが、読んで損はない作品だと思います!

 

第四間氷期 (新潮文庫)

第四間氷期 (新潮文庫)

 

 

ばいちゃ